色(Color)計測について
色の定義
可視光は0.4~0.7μmの波長を持つ電磁波の一種です。通常の光(太陽光、照明)などこの波長範囲全体に連続した波長を持つ電磁波(光)は、無色透明な光となります。
可視光は波長によって色の分布を持っています。
実際に人が色を感じるのは、ある波長分布を持った可視光線が、目の網膜にある赤・青・緑の3種の光に反応した刺激を脳に送り、それを脳が色として認識することで色を感知しています。
この網膜からでる赤・青・緑の3つの刺激値を3刺激値「X(λ)、Y(λ)、Z(λ)」といいます。
またこのX、Y、Zと波長の関係を表したものを「等色関数」と言います。
三刺激値と等色関数
下記に人の目に感能する分光感度グラフ(等色関数グラフ)を示します。
このなかのX(λ)は赤を感じる度合いを表し、Y(λ)は緑をZ(λ)は青を感じる度合いを示しています。
実際に人が感じるこの3刺激値は、物体からの反射(または透過)して入って来る色の波長分布を持った(色特性を持った)光と、この等色関数の積分値(波長ごとにX(λ)、Y(λ)、Z(λ)との積を足し合わせた値)により、色を感じることができます。
モニターRGB値と三刺激値の関係
前ページの等色関数グラフを見ると明らかなように、人が感じる赤、緑、青は、一般的に言われているRGB波長領域(R=400~500nm、G=500~600nm、B=600~700nm)とは違って、それぞれお互いの波長領域が重なり、また干渉し合っています。
そのため、色差(Color)計の計測データを例えばモニターに表示させる際には、モニター用のRGB値(R=0~255、G=0~255、B=0~255)へ変換する演算が必要となってきます。
この変換式を以下に示します。
- R=Rr・λ1-Rg・λ2-Rb・λ3
- G=-Gr・λ1+Gg・λ2+Gb・λ3
- B=Br・λ1-Bg・λ2+Bb・λ3
λ1~λ3・・・色色差(Color)計に使用される波長フィルターでの計測値
- (λ1・・Rフィルター波長データ(0~1.000))
- (λ2・・Gフィルター波長データ(0~1.000))
- (λ3・・Bフィルター波長データ(0~1.000))
また更に、当社の色色差(Color)計(可視・赤外ハイブリッド型センサ)のRGB用フィルター特性、光源ランプ特性、受光素子感度、素子前カットフィルター、他光学系特性を当てはめたときの補正パラメーターをこのRr~Bbの各係数に組み込むことで、より人の色感度特性に近づけることが可能となっております。
センサ光学特性補正後のRGB演算式
- R’=Rr’・λ1-Rg’・λ2-Rb’・λ3
- G’=-Gr’・λ1+Gg’・λ2+Gb’・λ3
- B’=Br’・λ1-Bg’・λ2+Bb’・λ3
このパラメーター(9定数)については、より色を近づけるため、幾つかのパターンを有しますが、これまでのテストデータから、数種類のパラメーターを切替えることで、より人の感覚に近い色を再現できます。
様々な「色」の表し方・表色系の種類について
XYZ表色系
物体からの反射(または透過)して入って来る光を見た時、目の中の網膜にある赤・青・緑の3種の光に反応する細胞が反応しその信号(刺激)を脳に送り、それを脳が色として認識することで色を感知しています。 この網膜からでる赤・青・緑の3つの刺激値を3刺激値「X(λ)、Y(λ)、Z(λ)」といい、このX、Y、Zと波長の関係を表したものを「等色関数」と言います。
RGB表色系
RGBはモニター表色系とも言われ、主にモニタにおける色の表示に使用されています。
色の3元色としてR(赤)、G(緑)、B(青)が有り、それぞれ「0~255」階調で濃淡を表しています。
従って、そのRGBの組合せは、全部で256^3=16,777,216通りの色を表すことができます。
L*a*b*表色系(CIE1976L*a*b*色空間
日本の工業分野での色彩管理における色差の測定に最も広く用いられているのがL*a*b*表色系です。
- L*値;明るさ(明度)の表示 L=0(黒)~100(白)
- a*値;赤系↔緑系の色の変化表示 a値=-側(緑)~+側(赤)
- b*値;青系↔黄系の色の変化表示 b値=-側(青)~+(黄)
またこのほかにL*a*b*表色系より以前の1948年にハンターが提案した「ハンターLab」も通常使用されます。
※色差について
ある基準とする標準色と、比較する測定対象の色(カラー)の色の差(色差)を表す方法として、L値、a値、b値の各差(⊿L、⊿a、⊿b)の自乗平均を求め、それを色差(=⊿E)として表しています。
これはLabの各値を3次元の座標空間と見なしたとき(x,y,z→L,a,b)の、標準色の座標(L,a,b)と、比較する色の座標(L’,a’,b’)の2点間の距離Lを、色差2色間の色差(=⊿E)として定義したものです。
この色差⊿Eを管理指標とすることで、各工業分野で色差管理における数値化が進み、基準色との比較判定が可能になり、品質向上につながっています。
ロビボンド表色系
ロビボンド表色は、食品油脂類や化学プラントでの化成品、石油製品、その他の多くの市場で使われており、主に液体の色の管理として古くから持ちいられてます。 サンプル液を専用のガラスセルに入れ装置にセットし、専用のカラーフィルターとサンプル試料の色を目視で比較し、見た目で同色となるよう、黄色Yや赤色Rのフィルターをそれぞれ手動で切替えて色を計測します。
カラーフィルター組合せ例
- Y=0.1~99.9(薄黄~濃黄)
- Y(0の桁) ;0.1~0.9(9色)
- Y(1の桁) ;1~9(9色)
- Y(10の桁);10~90(9色)
→Y=9^3=729色
- R=0.1~99.9(薄赤~濃赤)
- R(0の桁) ;0.1~0.9(9色)
- R(1の桁) ;1~9(9色)
→YR組合せ色 =729×81=59,049色
弊社色差計でのロビボンド測定においては、使用される色の範囲のすべてのフィルターの組合せデータをデータベース化し、フィルタ計測データと人の色を感じる特性を一致させることでロビボンド色の計測化を実現させています。
YRフィルター特性グラフを見ると、フィルターの切替ごとに計測データが大きく変動し、不連続特性となっています。 これは各フィルター単体、及びその組合せ枚数により光の透過率が変動してしまう為に起こります。 しかし、一方、人の目で計測した場合、人の目は自動で明るさを補正する機能が働くため、違和感なく(不連続とは感じず)計測しています。 従って、このままでは人の感覚と計測データは一致せず、測定誤差を生じる結果となります。この対策として、光の透過率(明るさ)の変動を、特殊演算アルゴリズムを用いて大幅に軽減ができ、ロビボンドフィルタの専用検量線作成が可能となり、ロビボンドカラーの自動計測が行えるようになりました。
可視(色)計測と赤外成分の複合ハイブリッド計測
可視・赤外ハイブリッド形成分計は、可視色差計測と、赤外成分計測を同時に行うセンサです。光源ランプから出る光を、可視RGBフィルターと、赤外成分用フィルターを高速で回転させ切り替えて測定対象試料に照射し、その反射光を捉え計測します。可視光、赤外線を計測する検出素子は、可視光用のSi光電素子と、赤外用のPbS、又はPbSeなどの光導電素子が1つのパッケージに収まったハイブリッド(複合)素子を使用してそれぞれの光を検出し、プリアンプで波形増幅し、信号処理にて演算・出力します。
測定例の紹介
1.フィルムのカラー測定と、塗工剤残留成分濃度測定
フィルム製造ラインにおいて、乾燥直後の各種成分(膜厚、水分、残留溶剤、等)を、赤外吸光度により最大3成分測定、同時にフィルムの色、透明度を可視光を使い、リアルタイムで計測し、品質管理、製造条件の最適化を行います。
2.液体の色差測定と、成分濃度測定
各種液体のバイパス配管に液体測定用セルを取付け、可視光による液体の色差、色濃度や、赤外吸光度による液体成分濃度を同時にリアルタイムで計測します。 食品製造ラインにおける、ロビボンドカラー、Lab色差、液晶や半導体製造ラインにおけるエッチング液、剥離液、洗浄液などの薬液の成分濃度や、汚れ(濁度)をリアルタイムで計測し、品質管理、安全管理(発火防止)、操業条件管理(液の汚れ監視で液交換の最適化)などを行ないます。
3.粉体の色差、赤外成分濃度測定
食品や、化学、砂、砂利などあらゆる粉体の色(カラー)、赤外成分を測定します。
可視光による各種色差(Lab)の計測監視することで、その後のブレンド配合比率などの操業条件管理をリアルタイムで行ない基準色管理の最適化が可能となります。
また例えば食品では、水分、脂肪、蛋白などの成分濃度、化学では水分や残留溶剤、他混入成分濃度測定などを赤外吸光度で計測し、可視色計測と同時に複数の計測をリアルタイムで行う事が可能です。