データインテグリティ
データインテグリティとは
データインテグリティ(Data Integrity)を直訳しますと、データ完全性という意味になります。医薬品査察協定・医薬品査察共同スキーム(PIC/S)ではデータが完全であり、一貫性があり、正確でき、信頼性があり、データのこれらの特性がデータのライフサイクルを通して維持される程度と定義されています。データの不正防止または不正を疑われるような行為(例えば、良い試験データだけを残し、不適な試験データを削除する等)の防止し、命や健康にかかわる医薬品の品質を保証することがデータインテグリティの本質です。
データインテグリティは新たな要求事項ではなく、従来の各要求事項の中で、データの完全性、正確性に対するリスクを再確認し、適切なデータ管理システムの構築を求めるものだと考えられます。
また、2021年4月に公布、同年8月1日に施行となった改正GMP省令にもこの考え方は組み込まれており、記録が作成されてから保管期間が満了するまでの期間にわたって継続的に信頼性(いわゆるデータ・インテグリティ)を確保する必要があると解説されています。
データインテグリティに関する規制
表1:各国の規制当局や団体からのデータインテグリティガイダンス(2021年7月現在)
発行日 | 発行者 | 規制名称 |
---|---|---|
2015年3月 | MHRA | MHRA GMP Data Integrity Definitions and Guidance for Industry (正式版) |
2015年9月 | WHO | Guidance on good data and record management practices(ドラフト版) |
2016年4月 | FDA | Data Integrity and Compliance With CGMP Guidance for Industry(ドラフト版) |
2016年5月 | WHO | Guidance on good data and record management practices(正式版) |
2016年7月 | MHRA | MHRA GxP Data Integrity Definitions and Guidance for Industry(ドラフト版) |
2016年8月 | PIC/S | GOOD PRACTICES FOR DATA MANAGEMENT AND INTEGRITY IN REGULATED GMP/GDP ENVIRONMENTS(ドラフト版) |
2017年3月 | ISPE | GAMP Records and Data Integrity Guide(正式版) |
2018年3月 | MHRA | MHRA GXP Data Integrity Guidance and Definitions(正式版) |
2018年12月 | FDA | Data Integrity and Compliance With Drug CGMP Questions and Answers Guidance for Industry(正式版) |
2021年7月 | PIC/S | Good Practices For Data Management And Integrity In Regulated GMP/GDP Environments(正式版) |
データインテグリティの原則
表2:「ALCOAプラス」原則
Attributable (帰属性) |
データを観測、記録、訂正した個人または装置を特定できること。 |
---|---|
Legible (判読性) |
全ての記録は読み取ることができること。 |
Contemporaneous (同時性) |
データが生成もしくは観察された時点で記録すること。 |
Original (原本性) |
最初に記録した原本か、原本の内容と意味を維持した真のコピーであること。 |
Accurate (正確性) |
誤りがなく信用できることであること。 |
Complete (完全性) |
事象を理解しようとする場合、事象の再構築に必要な全ての情報が重要である。 電子的に生成されたデータにおいて、完璧な記録には関連するメタデータが含まれる。 |
Consistent (一貫性) |
文書化規範を全ての工程に適用すること。逸脱工程にも適用すること。 |
Enduring (耐久性) |
記録が有効であることを保証するには、記録が必要とされる全期間にわたり、それらを確実に存在させること。 |
Available (入手可能性) |
記録の維持期間においては、いつでも記録を取り出し閲覧できること。 |
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